【第1,439号】 「失われた熱意」~なぜ日本だけが世界から取り残されているのか?その3~
【第1,437号 「失われた熱意」~なぜ日本だけが世界から取り残されているのか?その1~】
https://km.kando-m.jp/news/mm1437/
【第1,438号 「失われた熱意」~なぜ日本だけが世界から取り残されているのか?その2~】
https://km.kando-m.jp/news/mm1438/
これらの号では、日本が国際的な競争力を失っている要因に
「エンゲージメント(仕事への積極的な関与)」があり、
それは「賃金停滞と経済的要因」と「制度的・職場環境の要因」であることに触れました。
本日は「文化的・社会的要因」について触れます。
日本固有の文化・社会的背景も、エンゲージメントの低さに影響しています。
戦後直後の復興期において、日本を豊かにするためには外貨獲得が重要とのことで、
様々な企業が日本製品を海外に売りに行きました。
自動車、電化製品、カメラなどですね。
SONYの奮闘物語はNHKの「プロジェクX」でも取り上げられましたし、
SONYの設立趣旨書には「日本再建」という文字が残されています。
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/History/prospectus.html
誰のお言葉だったかは失念しましたが(松下幸之助翁か盛田昭夫さんかな?)、
「戦争では負けたけれど経済戦争では負けない」
という言葉で社員が一丸となって、戦勝国である欧米や共に敗戦国となったドイツにも負けない、
という気概をもって仕事に命を掛けていました。
ところが、経済は完全に復興し、さらにバブルと言われる高度成長期においても、
仕事に命を掛け、プライベートを犠牲にすることを会社は社員に要求し、
「会社人間」という言葉があったように、会社に人生を捧げるような働き方をしてきました。
それが「社畜」という言葉を生み出したと思います。
この頃は、「働く目的」や「個人の夢・自己実現」といった視点は疎かにされており、
復興という国家的な願いは達成されたものの、
個人が自分の夢を追求することは許されなかったのです。
私が若い頃は「有給取得者は出世の道はない」と言われました(ホンマデスヨ)。
昭和・平成・令和と時代は過ぎ、少しずつ働き方も改善されてはいますが、
いまだに「自分のやりたいことより組織への献身が重んじられる文化風土」は残っています。
ギャラップの調査では「自分の仕事が好きだ」と答える日本人は76%と高いにもかかわらず、
「あなたは仕事に対して熱意をもって取り組んでいますか?」の質問に
「イエス」と答える人は6%しかいません。
この事実は「好きだけど、しんどい」「やりがいは感じないが、責任感で頑張っている」ということなのです。
「好きだけど楽しくない」って「嫌いだから楽しくない」よりもストレスは大きいし、
給料も安いのです。
日本人って、本当に頑張っているなぁ、と思います。
社会で働くことを知らなかった新卒者が、会社の先輩達の働く姿を見て「楽しそうじゃない」と感じたり、
会社のために身を粉にして家庭や健康を犠牲にする姿を見たら、
「ああなりたくない」と思うのも仕方が無いと思います。
実際ギャラップのデータでも、
日本は世界で最も「静かに退職(居心地は悪いが仕事は辞めず最低限の力しか出さない)」している人の割合が
高い国の一つとされています。
余談になりますが、「退職代行」がビジネスとして成り立っているのは日本だけです。
「辞めます」と口に出せない文化的背景(上下関係や同調圧力)がビジネスとしての退職代行を生みだしています。
話を元に戻します。
組織への過度のコミットメントに対する警戒感や
仕事以外の人生を重視する価値観の台頭もエンゲージメント率の低さの一因です。
さらに日本の社会文化として、「和」を重んじる協調性や失敗・批判を避ける傾向も影響しています。
会議で手を挙げて発言しない、挑戦して失敗するくらいなら現状維持を選ぶ・・・・・。
実際に、私が目にした“ある会議”の風景を紹介します。
議事進行が進まず、重苦しい沈黙が会議を支配していました。
そこで社長が「何のための会議だ!発言しろ!」と怒鳴ったのです。
そこで恐る恐る若手社員が発言したのですが、社長は発言の途中で
「そんなくだらんことをわざわざ会議で言うな!」と遮ったのです。
また、こういう事例もありました。
「何故、御社は改善提案書を採用されていないのですか?」
「書いたらそれのリーダーに任命されるし、うまく行かなかったら責任を取らされるから」
これら2つの事例からも、日本企業におけるエンゲージメントの低さが、
単なる個人の姿勢ではなく、文化や風土によって形作られていることがよくわかります。
このような姿勢はやがて「負の組織風土」となり、社員は受け身で指示待ちになり、
主体性や情熱が削がれていきます。
米国などでは個人の主張や成果を強調する文化が比較的強く、
上司も部下に率直にフィードバックし、エンゲージメント向上に努めますが、
日本では遠回しなコミュニケーションやアンフェアな扱いへの泣き寝入りが多く、
社員のフラストレーションが表に出にくい分、内なる熱意の欠如となって現れているのかもしれません。
なお、日本企業では近年働き方改革などで労働時間の是正や在宅勤務の推進など
制度面の改革も進みつつありますが、
ギャラップによれば
「日本ではこの10年以上、熱意なき社員の割合が高止まりしたままほとんど改善していない」
とされています。
これは、表面的な制度変更では不十分で、根深い文化や意識の変革が必要であることを示唆しています。
明日は「日本固有の構造的課題と今後の展望」に触れます。
■本日の教訓
“好き”でさえ、しんどくなる社会では、夢も希望も芽を出せない。
熱意は、安心と尊重の土壌にしか育たない。
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