【第1,440号】 「失われた熱意」~なぜ日本だけが世界から取り残されているのか?その4~
【第1,437号 「失われた熱意」~なぜ日本だけが世界から取り残されているのか?その1~】
https://km.kando-m.jp/news/mm1437/
【第1,438号 「失われた熱意」~なぜ日本だけが世界から取り残されているのか?その2~】
https://km.kando-m.jp/news/mm1438/
【第1,439号】 「失われた熱意」~なぜ日本だけが世界から取り残されているのか?その3~
https://km.kando-m.jp/news/mm1439/
これらの号では、日本が国際的な競争力を失っている要因に
「エンゲージメント(仕事への積極的な関与)」の低下があり、
「賃金停滞と経済的要因」、「制度的・職場環境の要因」、「文化的・社会的要因」
によることを指摘しました。
本日は「失われた熱意」シリーズの締めくくりとして、
日本のエンゲージメント低迷に影響する「構造的課題と今後の展望」を整理します。
■他国との比較から見える日本の“弱点”とは?
他国との比較から浮き彫りになるのは、
米国の「成果を出せば昇給・昇進」、
中国の「豊かさへの強い上昇志向」、
韓国の「若者を中心とした改革の声」
といった動きに対し、日本は経済・制度・文化の“三重苦”に取り残されているという現実です。
以前に台湾人・ベトナム人の大卒の採用に関わったことがあり、延べ10名程度採用しましたが、、
彼らは男女問わず、ほぼ1年で全員が退職しました。
その理由は、まさに上述した3つの要因に近く、
「評価はどのようにされるのか?」
「もっともっと稼ぎたいから残業させてくれ」
「先輩社員の考えが古い」
といった声を上げていました。
当時は私も日本企業で働くのであれば、日本企業の風土やルールに馴染んで欲しいと思ったのですが、
今では、そもそもその考えが間違いだったと感じています。
日本企業の変化に慎重すぎる空気や「現状維持」が美徳とされてきた価値観は
日本人にもそして外国人にはそれ以上に耐えられないのでしょう。
■日本固有の構造的課題とは?
1.人事・雇用制度の硬直化
終身雇用・年功序列が根強く、専門性より年次や社内ポストが優先される構造にあります。
ジョブ型雇用(職務内容を明確にして専門性に応じて採用・配置する制度)や
社内公募制(社員が自ら希望する部署や職務に応募できる制度)など、
個人の適性を活かす仕組みが限定的です。
2.長時間労働と高ストレス
働き方改革が叫ばれる一方で、現場では「休めない」「帰れない」文化が続いています。
ギャラップによると、日本では「昨日ストレスを感じた」人が 41% に上るとのことです。
前職の広告業では、当日の内に帰宅することはまずなく、その上まだ暗いうちに出社する毎日。
そんな状態でミスをすれば、やり直しだけでなく、迷惑料を請求されることもありました。
超ストレスの毎日で、毎年新卒を約70名採用しても、
3年経つと10名しか残っていないという苛酷な状況にありました。
こうした経験を通して、「これ以上に苛酷な職場はないだろう」と鍛えられた感覚はありますが……。
3.旧来型マネジメントの支配
「命令型」や「放任型」の管理が主流で、部下の意見や強みを活かす文化が弱いと言えます。
承認やフィードバックが少なく、心理的安全性が育ちにくい職場環境です。
4.人材活用の偏りと多様性不足
女性管理職の比率は低く、若手のキャリア形成も不透明です。
日本では女性労働者のエンゲージメントが男性より低く、78%の女性が職場で
「熱意がない(もしくは周囲から意欲を引き出されていない)」状態にあるとの指摘もあります
また、ミッション・ビジョンの共有が不十分で、仕事に意味を感じにくい現場が少なくありません。
ミッション・ビジョンの共有が不十分な会社ほど、これらを朝礼で唱和させています。
覚えることと実践することはまったく違うのに、「覚えさせる」のが管理職の仕事、
「実践しない現場が悪い」と思っているのかもしれない……と感じてしまいます。
5.転職や流動性の低さ
不満があっても転職に踏み切れず、「辞められない職場」に居続けるケースが多数あります。
結果、職場に不満を抱えたまま働く人が多くなり、職場の空気も重くなりがちです。
「会社は変えてくれない」「何処行っても一緒」
このような声を耳にしたことがあります。
■では、どう変わっていけばよいのか?
1.制度改革の推進
ジョブ型雇用や社内公募、非正規から正社員への転換促進ど、
「適材適所」と「公正な処遇」を軸にした制度整備が急務です。
2.働き方の柔軟化と健康重視
業務効率化と休暇取得の促進によって、ストレスを溜め込まない職場へ改革することです。
働く時間ではなく「成果」と「質」で評価される仕組みづくりが必要です。
3.マネジメントスタイルの転換
コーチング型・伴走型マネジメントへの移行。
上司が「話を聴き、認め、引き出す」存在であることが、エンゲージメントを左右します。
役職名で呼ばない、上司も部下もともに「さん付け」で呼ぶなど、
形から入るだけでも関係性は変わってきます。
4.多様性の受容と活躍支援
性別・年齢・背景を問わず、力を発揮できる職場づくり。
とくに女性・若者が希望を持てる環境整備が鍵となります。
女性と若者だけで社長直結のタスクチームを作って、環境改善に取り組んでいる企業もあります。
5.職場とミッションの再接続
社員が「自分の仕事が社会や人の役に立っている」と実感するには、
日々の業務と会社のビジョンをどう結びつけているのかを“見える化”することが大切です。
その方法の一つが、「仕事で生まれたストーリーの共有」です。
私が事務局で取り組んでいる 感動物語コンテスト(カンコン) は、
まさに一人ひとりの仕事の中にある “誰かの役に立った実感” を、
仲間と共有し合うことで、「働く意味」を再確認する機会になっています。
実際、お客様から感謝された経験や社会に何かを届けた実感を職場で物語として共有することで、
「自分の仕事にも価値がある」「会社の理念とつながっている」と感じられるようになります。
カンコンのような場を社内に持つこと。
それこそが、ミッションの“見える化”であり、エンゲージメントを高める有効な第一歩です。
■エンゲージメント改革は「働きがい改革」
エンゲージメントの向上は、社員の幸福度を上げるだけではありません。
生産性、創造性、離職率、企業業績などにも大きく影響を与える「経営戦略」そのものです。
実際、ギャラップは「熱意なき社員」が多いことで
日本は「年間86兆円規模の損失」を出している、と試算しています。
だからこそ、経営者やマネージャーが現場に向き合い、
一歩ずつでも「働きがいある職場」に近づけていく努力が求められます。
■本日の教訓
熱意を生む職場は、意識と制度と文化の三位一体で創る
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