商品中心や消費者志向は過去のモノ。現在は「価値観」「世界観」を求められています。
「近代マーケティングの父」、「マーケティングの神様」と評されるフィリップ・コトラーは現在のマーケティングを3.0時代と呼んでいます。
下記のマーケティング変遷図をご覧下さい。
マーケティング1.0時代は「製品中心で機能に価値があった大量生産大量消費の時代」と定義し、2.0時代は「消費者志向で機能的な価値プラス可愛いや高級感があるといった感情的な事に価値を求められ、他品種少ロットの時代」としています。
そして3.0時代では「どんな素敵な事が起こるのか、と言ったコトの価値が中心で、機能的かつ感情的なものにさらに精神的価値(独特の世界観)が求められ、人間志向、社会貢献、共感性(バイラル:SNSなどの口コミ)の時代」としています。
何故、今マーケティング3.0なのでしょうか?
第一に「モノが溢れており、市場が成熟している」ということでしょう。
今の日本の家庭において、必需品が家庭に無い、ということはまずありません。昭和の時代は、テレビ、車、電話は一家に一台でした。ところが、今は各部屋にテレビがあり、お風呂にまである家があります。車も一人一台。更に複数所有やバイクを所有している人もいます。電話は複数台持ちも多いです。およそ生活に必要なモノはほとんどが揃っており、新製品が出てきても、今使っているモノが壊れたら、買い換えよう・・・くらいなモノです。
かつて日本の家電メーカーは世の中に無い物を産み出し、それがメガヒットしました。テープレコーダー、トランジスタラジオ、ビデオデッキ、ヘッドフォンステレオなどですね。ところが現在はなかなか世の中に無い物を産み出せず、苦戦しています。どうしても「改良型」のリリースになりがちです。
家電店に行くと同じ商品カテゴリーにたくさんのメーカーのたくさんの品種が並んでいます。例えば、デジカメ。コンパクトから一眼レフまで、ニコン、キャノン、オリンパス、SONYなどのメーカーが1メーカー当たり何種類も出しています。「シャッターを押すと撮れる」という機能がカメラの基本ですが、この機能とデザインでは、ブランド名を隠したら区別がつきません。
ところが、GoProのようなサーフィン、スノーボード、自転車、バイクといったシーンで今までは撮影できなかった撮影ができるカメラやRICHOが発売した全天球カメラTHETAには撮影アングル(画角)という撮影時に最初にする最も基本的な作業が無くなったカメラには独特の存在感があり、「何これ?」と思わず手に取ってしまいます。「新たな価値」の提供が重要ですね。
これらの「新たな価値」には開発者の
新たな体験をして欲しい
という思いの強さが製品を通じて感じることが多いことも特徴と言えます。
第二に「SNSの発達」が上げられます。
facebook、twitter、広い意味ではブログや電子掲示板といったSNSの発達によって、開発メーカーの企業の情報だけでなく、開発秘話までがネット上に溢れています。その情報はポジティブな情報からネガティブな情報まで様々ですが、どちらの情報も伝播速度はアナログ時代とは比べモノにならないスピードとなっています。結果、ネット上の情報が製品購入に「大きく影響」を及ぼすことになりました。
第三が「社会問題」「環境問題」と言ったことの顕在化です。
少子高齢化、震災といった国内の問題だけでなく、世界規模の環境問題、テロといった「社会的問題」に知らん顔ができない時代となっています。これらの問題のために
自分に何かできないか?
を一人ひとりが考えるようになりました。取り組みやすい「ゴミの分別回収」「こまめな電気のオンオフ」といったことから「太陽光発電」「ハイブリッド車の購入」といったことなど、一人ひとりができることを積み重ねていくような社会となっています。この「できることをする」と言ったことへ共感されやすい製品・サービスが選択されています。
これらが市場が求めていることであり、それに対応したマーケティングを行わないと受け入れて貰えません。
3iモデルの綺麗な三角形をつくることが重要。
上図はコトラーのマーケティング3.0 ソーシャルメディア時代の新法則「3iモデル」です。
ブランド・インテグリティ
「ポジショニング」と「差別化」から成り立ちます。インテグリティとは「高潔」「誠実」「清廉」と言った意味です。最近はメディアに企業の不祥事が取り上げられることも多く「欺瞞」「偽装」と言った言葉が登場します。企業ブランド価値を落とさないために日々「誠実」に企業活動をすべきなのに安易に「偽装」に走ったために「ポジション」を失っています。市場から「信用できない」と「差別化」されてしまいます。
ブランド・アイデンティティ
「ポジショニング」と「ブランド」から成り立ちます。消費者の心理の中における位置づけのことを指します。「マインドシェア」という言葉で表現されることもあります。カップ麺と言えば「日清カップヌードル」、ヘッドフォンステレオと言えば、かつては「SONY ウォークマン」今は「iPHONE」、と言ったようにあるカテゴリで消費者の心の中の大きなシェアを占めるブランドの事です。消費者の心理にある、自社ブランドが占める重要度と言い換えても良いでしょう。
マインドシェアが高い状態=ブランドの認知度が高い状態ですので、そのブランドは強固な基盤の上に存在していると言えます。すなわち新製品の拡充やロイヤリティの高い顧客の獲得、よりプレミアムな価格戦略を取ることも可能となります。「顧客にとってオンリーワンの存在」ですね。
ブランド・イメージ
「差別化」と「ブランド」から成り立ちます。消費者に「イメージの善し悪し」を与え、「好き嫌い」と言った感情的なニーズに関わります。windows95がリリースされ、インターネットが普及し、パソコンが個人のモノとなり、ビル・ゲイツの手腕を誰もが疑わない時でも、appleに好感を感じていた人は多かった様に思います。
企業ブランドとは「存在価値」の実践。
ビジョン(存在価値、経営理念)とミッション(長期的目標、志)を実践
することが「ブランド構築」と言えます。
企業が「こうありたい」「こんなサービスをしたい」「こんな商品を出したい」と思っていることが、社会に良い評価をされることで、初めて「存在価値を認められる」ことになります。すなわち「ブランド」として、世に伝えられ、語られます。
ところが、顧客や従業員を魅了する独自のビジョンとミッションを実践せずに、ブランドイメージのみ創ろうとする企業がたくさんあります。最近、燃費の偽装でメディアを騒がせているブランドは、以前にもブランドイメージを落とすことがありました。結局、経営陣のブランドに対する意識が低いことが要因で、信頼を取り戻すことができませんでした。
企業ブランドの構築は
こうありたいと考えて行動する
ことからスタートします。ブランドを世に伝え、語られるためには、経営陣はもちろんのこと、スタッフ全員が自社ブランドのあるべき姿を考え、行動すること。すなわち、
ビジョンとミッションを実践すること
以外には構築できません。