【第1,438号】 「失われた熱意」~なぜ日本だけが世界から取り残されているのか?その2~
【第1,437号 「失われた熱意」~なぜ日本だけが世界から取り残されているのか?その1~】
https://km.kando-m.jp/news/mm1437/
この号では、日本が国際的な競争力を失っている要因に
「エンゲージメント(仕事への積極的な関与)」があり、
それは「賃金停滞と経済的要因」によるとお伝えしました。
本日は、「制度的・職場環境の要因」について触れます。
日本企業の雇用慣行や職場環境にも、従業員エンゲージメントを阻む要因が数多く存在します。
まず典型的なのが終身雇用や年功序列を前提とした人事制度です。
令和になり、昭和・平成とは随分と企業も就業者もその意識は変わりましたが、
依然として日本社会には根付いています。
日本では伝統的に「会社に入る」のであって「特定の職務に就く」わけではないとされ、
新卒で一括採用された社員は会社の判断で様々な部署に配属・異動されます。
このため個人の専門性や希望よりも会社都合が優先される傾向が強く、
せっかく大学で学んだ知識や本人の適性が活かされない部署に回されることもしばしばです。
基本的に、社員は与えられた仕事に文句を言わず従うことが美徳とされ、
「望まない仕事でも笑顔で頑張る忠誠心」が評価される文化すらあります。
その結果、自分のやりたいことと仕事がかけ離れている社員も多く、
「興味も熱意も持てない仕事に就かされている日本人が大量に存在するのは不思議ではない」と言えるでしょう。
一時期「社畜」という言葉が注目を浴びたことがありますが、その言葉に賛同しないまでも、
意味するところは「わかる」という人が多かったと思います。
私は、入社3年が経過した新卒者から、以下のような相談を一度ならず受けたことがあります。
就活中は、「まずは内定を!」と思っていたので、
「思った部署に配属されないこともあるよ、大丈夫?」と問われても
「はい、それも大事な経験となりますので大丈夫です」と答えてはみたものの、
3年経過して、大学の友人が自分の専門分野でやり甲斐をもって働いている姿を見ると
「このままで良いのかな?」とふと思ってしまう・・・。
新卒の30%以上が、入社3年で退職する事実の背景には上記のような悩みがあると私は思います。
実際、日本の職場では社内公募制度など社員の志向を考慮した配置転換は限定的で、
人材配置のミスマッチがエンゲージメント低下を招いています。
さらに、自分の希望する配属を口にしても、
「今は人が足らないから」
「希望先には空きが無いから」・・・、
と返答されたり、そもそも人事に対して希望を言えない日本企業の持つ風土も課題としてあるでしょう。
また、日本の職場は長時間労働や有給休暇取得の低さ、
厳格なヒエラルキー(上下関係)といった特徴があり、これも熱意を削ぐ要因です。
OECD(経済協力開発機構)の統計でも、日本の年間労働時間は主要国で最長水準にあり、
過労死が社会問題化するほど社員は疲弊しています。
さらに、日本では休暇を取りづらい空気や「周囲に迷惑をかけてはいけない」という同調圧力が根強く、
結果として心身のリフレッシュができず、余裕を失う社員が多いです。
加えて、トップダウン型の意思決定や形式的な上下関係が厳しい職場では、
現場の社員が自分の意見を言い出しにくく、自律性や達成感を得にくい傾向があります。
ギャラップのエンゲージメント指標には
「自分の意見が職場で尊重されているか」
「上司から十分な認識・称賛を得ているか」
といった項目がありますが、
日本企業では部下をほめたりフィードバックしたりする文化が希薄で、
「何も言われないのが良い証拠」と捉えられがちです。
私の顧問先では何度かギャラップのこの調査を行いましたが、どの企業も上記の2項目の評価は低かったです。
部下を尊重し、称賛する側の上司の意識が低いことは理解できますが、
評価される部下側も「そこをあまり重要視していなかった」というコメントを目にしたときには少々驚きました。
このようなコミュニケーション不足や権限委譲の乏しさも、
社員のエンゲージメントを下げる一因となっています。
さらに、日本の労働市場には正社員と非正規社員の身分格差が存在し、
職場内の一体感の欠如を招いています。
非正規社員は待遇が劣るだけでなく、福利厚生や昇進機会も限られ、
「会社に大事にされていない」感覚を抱きやすいです。
例えば、私が見てきた企業では、慰安旅行や望年会は正社員のみ参加となっている例が多かったです。
こうした内部の分断は社員のロイヤルティやモチベーションを下げ、
組織へのコミットメント(ひいてはエンゲージメント)を弱める構造的な問題と言えます。
明日は「文化的・社会的要因」に触れます。
■本日の教訓
熱意は強制では生まれない。構造が変わらなければ、心は動かない。
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